スピーカーは渡辺弘美さん。現在はAmazon Japanにお勤めで渉外本部長をなさっておられますが、通産省→経済産業省におられた後JETRO(NY)でIT分野の調査を担当されており、Glocomの客員研究員を経て現職へというご経歴。海外と日本とのIT化の違いについて見つめてこられ、そして(日本を動かしていると言われる)官僚ご出身で民間へいらしたということで、日本をどう見ておられるのか、これからどうすべきだと考えておられるのか是非お話を伺ってみたいと思っていた方でした。
講演は非常に面白かったです。必見のスライドはこちら。
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超勝手サマリーとi-Japan戦略2015関連情報追加:
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「ネットネイティブ度」とはネットの方がリアルより重要である度合い。日本のネットネイティブ度はアメリカと比較して、EC分野ではそこそこありそうだが、広告・メディアやヘルスケアの分野では大きく遅れている。音楽→アメリカはDRMフリー、日本はまだまだ。送金→アメリカはPaypal、日本は銀行振り込み。電子商取引→アメリカではKindle、日本ではKindle導入に障壁。
キーワードは「パーソナライゼーション・ソーシャル・ユーザーエクスペリエンス・バーチャル&リアル・オープン」。
NewYorkTimesのトップページはiGoogleのようにカスタマイズできて他社コンテンツも取り込めるのに日経はstatic。政治分野では公職選挙法の問題がある。アメリカではchange.gov、イギリスではNumber10など、市民が政策提言を行い、投票できるサイトがある。イギリスでは政府所有情報を公開してAPIをオープンにし、それを使った新しいサービスを思いついたら賞金2万ポンドという企画も「Show Us A Better Way」。教育分野でも海外では電子ブックや電子黒板などが導入される中、日本では7年前にコンピュータが一斉に導入されて以来投資がないので古いパソコンをそのまま使っている。イギリスでは初等教育でTwitterとブログの使い方を教えるべきと言われている中、日本では携帯の利用禁止。
医療に関しては一般医薬品のネット販売規制は記憶に新しいがそれ以外にもレセプトのオンライン化、遠隔医療、電子処方箋、診療記録の外部保存など全然進んでいない。ちなみに一般医薬品のネット販売規制の件、パブコメで84.9%が反対だったのに通されてしまったのは厚生労働省的には、そもそもパブコメは我々の意見を聞いているのではなく、厚生労働省側が検討している中に抜け漏れがないかをチェックするために聞いているというスタンスらしい。また、なぜ厚生労働省がコンサバかというと薬害エイズ問題の際に厚生労働省の「個人」が刑事罰で裁かれるという異例の事態があり、そのせいでコンサバになっているのではないかとのご意見でした。なるほど。。。というわけで日本における医療・ヘルスケア分野のIT化は全然進んでおらず、その理由は政府による規制が大きい、と。
。。。という中、日本のネットネイティブ度を上げるにはどうしたらいいか?また、医療に限らずパブコメを出しても民意は反映されないのはどうしたらいいか?
一つは国民の意識を高めること。ネットネイティブな発想に必要なのは「画一的 vs 個別化 ・ 一方向的 vs 双方向
・ 提供者側の発想 vs 顧客中心 ・ 閉鎖的 vs オープン」
政策に民意を反映させるには、パブコメを出す時点では遅いので早期に国民の側から政策立案ができるのも重要。一例として、「
iーJapan戦略2015」があるとのこと。慶應大学の國領先生が中心に進めておられる、「
デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行 等の重点点検」に関するパブリックコメントの募集というのがあったそうです。これ、よくよく考えてみるとどこかで見たような気がするのですが、あまり話題になっていなかったような気がします。このパブコメで(多分)國領先生が何をしようとしていたかというと
通常はだいたい決まっちゃった後に募集されるパブコメを、調査会が始まる前にやってしまい、それを実際の調査会で議論するときにまな板に載せようという画期的な試みだったらしい。
パブコメ募集サイトから引用:「デジタル社会を実現していくためには、デジタル技術・情報の利活用を阻むような規制・制度・慣行、サービスの仕組みそのもののあり方や運用などを国民にとって利益となる形で抜本的に見直すことが必要であるとの観点から、規制・制度・慣行等の「重点点検」を実施することとしています。また、同本部において、この重点点検を実施するための「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」(外部有識者により構成される予定)の設置が決定されました。(中略)IT担当室では、上記専門調査会発足に向けた準備作業の一貫として、幅広く国民の皆様からも御意見・御提案を伺うこととし、下記の要領でパブリックコメントを募集いたします。頂いた御意見は、今夏に発足予定の「デジタル利活用のための重点点検専門調査会」において内容を確認させていただき、改善を進めるべきと考えられるものについては、優先順位を付した上で、点検が実施される予定です。」
で、それに先立って國領先生がまとめられた資料が
こちら。
遠隔医療とか、引越し時の行政手続についてとか、色々な分野で「何が問題なのか」「どうすればよいのか」が掲載されています。もちろんこれは一例にすぎないわけですが、「日本で暮らしていてこんな問題があるのでこんな風に政府に解決して欲しいんだけど!」ということを直接声に出してまな板に載せるということができる機会だったわけですね。もう締め切られちゃってますけど、こういうのをもっとやってほしい。本当はアメリカのchange.govやイギリスのNumber10のような国民が政策を投稿するサイトができる方がいいですが、勝手に作っても政府が見てくれるわけではないので、日本政府の流儀がパブコメならパブコメ流儀に従いつつ、でも意見を出す意味がある時期に意見を出させてもらうってわけです。 No more ミキティ無双!ですね。
加えて、「アジェンダ整理をする人」や政府と一般の「翻訳をする人」が必要であろうとのこと。いきなり意見を挙げても使っていない人にとっては何を言われているからわからないですからね。Twitterを使ったことのない人に「Twitter解禁して!」と言ってもわからないものは恐ろしいものなので解禁できないでしょう。。。というわけで、渡辺さんは「CIOに誰がなるのかが重要」なのではないかと仰っていました。
アメリカのオバマ政権のCTOのAneesh Chopraさんは相当優秀らしいですね。Harvardの公共政策の修士号をもっていて、2500近くの医療機関に助言する民間の医療シンクタンクAdvisory Board Companyの役員を経てVirginia州技術長官として州政府改革、技術革新、経済発展へのテクノロジーの応用などをやっていた手腕が買われたとのこと。ちなみに
この記事によると
オバマ大統領の選挙時のメディア戦略はFacebookの4人の創業者の1人、当時24歳のクリス・ヒューズ氏が立案したものなんだそうです。
イギリスはもっとすごい。なんといっても今年、インターネットの父、wwwを考案・開発してURL・HTTP・HTMLを最初に設計したあの Sir Tim Berners-Lee がイギリス政府の Information Advisor に就任しています。
日本でも優秀なCIOを発掘して、よい方向に変えてくれるとよいなと思います!
以下は講演を聞いていたときのメモとtsudaっておられた方のコンテンツを少しお借りした物です。
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講演メモ
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●ネットネイティブ度
社会経済活動でネットが第一義的になっている(ネットの方がリアルより重要)=ネットネイティブ
ex1)音楽(どこで入手?)
欧米→DRMフリー
日本→権利者からの許可が得られていないので実現出来ていない。音楽データを自由につかえるかどうかでは海外に遅れている。
ex2)送金(友達にお金を送るのは?)
海外→PayPalがデファクトスタンダード
日本→銀行から振込。例えば定額給付金も。結果、配布コスト(振込手数料)が825億にのぼってしまった。
日本では銀行法のために送金業務を銀行以外が行うと違法になる。日本のPaypalユーザはシンガポールの会社と契約していることになっている。「資金決済に関する法律案」によって「資金移動」ができるようになった。今後はPaypalのような送金ビジネスができるだろう。
日本ではマネーロンダリング防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律)の本人確認義務がある。口座を開くとき・10万円以上入れる際には、免許もしくは保険証コピーによる本人確認が必要。唯一認められている方法はいわゆる住基カードを使った方式のみ。海外(PayPal等)ではクレジットカード番号で本人確認ができる。
ex3)電子商取引
Amazonの売り上げはグローバルで2兆円。うち、アメリカとアメリカ以外が半々。アメリカのアマゾンでは73ものカテゴリがあるが、日本は45カテゴリーしかない。大きな要因はKindleをまだ日本では発売していないこと。しかし発売するにはクリアすべき障壁がある。例えば、書籍の最終稿のデータを保有している人がはっきりしていなかったり、図表は別の会社にいっていたりと、出版社にいってもデータがない場合がある。また、再販の問題もある。電子ブックは再販の制限を受けないが、出版社や取次ぎの人などの思いもある。新聞社の対応もこのビジネスに参入してくるか、まだわからないところがある。その他、Amazon Remember(iphoneで写真を撮るとそれに近い商品を紹介してくれる)やWish List等Amazonのサービス紹介。
キーワードはパーソナライゼーション・ソーシャル・ユーザーエクスペリエンス・バーチャル&リアル・オープン
●メディア・広告
-Personalized Media - New York Times
日経新聞は誰でも同じトップページ
NYTimesのMy times betaでは、読者によって最初に表示されるページが関心毎に異なり、iGoogle的に見られる。また、このサイトにはBBCやWashingtonPost等NYTimes以外のサイトのニュースももってくることができる。(おそらく滞在時間を延ばすため)
-Vote - digg
皆が面白いものをとりあげ、面白いものと思ったものが上位にあがってゆく。ユーザの関心ある情報がわかるようになっている。
-Celeb+Visual Search(画像検索) - Like.com
セレブがつけている同じベルトを画像認識で取ってきてamazon等に飛ばす
-Social Media News - GM Europe
お客さんとの双方向のプレスリリース。海外では一見するとブログかと思えるような物が。会社の発表でも双方向な環境が出来上がっている。
- Internet TV - Hulu
- Physical Interaction - iPhone/MS Surface
ハードを使ったインタラクションが今後メジャーになる。例えばMSのSurfaceはアメリカでは既に実用化されている。
→ここまでのジャンルはレギュレーションはあまりないので民間のイノベーション次第。政府の政策というものが背景となって出てくる決定的な違いがある。強烈な例がヘルスケア。
●ヘルスケア・医療
-一般医薬品の郵便等販売規制
-民主党は見直しを検討とのこと
-パブコメにおいて84.9%が反対で、賛成は0.5%だった。パブコメをないがしろにするのか?との声もあったが、そもそもパブコメは規制そのもののねっこから賛成・反対を聞いているわけではなく、厚労省の側で検討した中に抜け落ちている観点があるかどうかを聞きたいだけで、パブコメ参加者の意見を反映させる仕組みではなかった。
-検討会では5/22に決まっていて、6/1から規制は導入されていたが、議事録がサイトに掲載されたのは7/22。(遅すぎる!)
-レセプトのオンライン化(診療報酬請求のこと。審査をして健康保険組合に送る。)
現状は紙なので、お金が戻ってくるのに2-3ヶ月かかる。オンライン化したら早いのに!電子カルテが増えてきているのに先送り。民主党 INDEX2009でも慎重。
-遠隔医療 には2種類ある。
1)医者と患者がオンラインでやるもの
2)医者同士がオンラインでやるもの(専門医がいない場合など)
基本的に対面診療。例外として、離島・慢性疾患の二診以降のみ。(初診は対面)
-電子処方箋
電子カルテで電子化が進んでいるのに進まない。小さい薬局でパソコンが買えないところが対応できないところへの配慮。
-診療録の外部保存
院内のサーバーに預けておくよりもセキリティ専門の会社に預けておけばいいのに禁止されている。
-Google Personal Health Record
USではGoogleのPersonal Health Recordのような物があり、本人の了解の元、過去の診療履歴や処方箋の記録もインポートでき、匿名でデータを公開。その情報を元に専門知識、資格を持った第三者がアドバイスできる。
-Explore DNA (23andMe)
セルゲイの奥さんの会社。唾液でDNAを解析→web上で公開し、同じような症状の人を探せる。
-Web Market Place (Carol)
医療行為をマーケットプレイスにしたサービス。疾病の名前を入れると治療パッケージが出てくる。オーダーもできる。ホテルや航空券を買うような感じで医療サービスを買える。
-Cisco テレプレゼンス
高精細ディスプレイで遠隔医療。
●政治
-オバマがFlickr/MS Photosynthの活用。
-アメリカでは62個の政治機関がTwitterを導入しているが、まだ日本では政府機関でのtwitter利用はない。
-公職選挙法の問題は2つ。
1)選挙期間中以外に選挙運動をしてはいけない。選挙運動とは「選挙名の特定」「候補者名の特定」「その候補者への投票依頼をすること」
2)選挙期間中の文書図画の頒布は、法で規定されているビラと葉書、マニフェスト以外は禁止。→ネットの利用は禁止。
-日本の公的個人認証サービス
使おうと思ったら、ターミナルモードにしなければならず、40桁近くある番号を目視で確認しろというプロセスがあった。こんなことは普通のユーザにやらせるのはいかがなものか。
- オープン・アイディア- Change.gov
国民がオバマにやってほしい政策を書き、投票するサイト。sales forceが作ったidea exchangeというサービスをオバマは使った。DELLも製品要望に使った。
- イギリス→Number10.gov.uk
国民が誰でも政府への請願を書くことができ、投票するサイト。
- イギリス→オープン・アセット
政府がもっている膨大で有益な情報をオープンにして使いやすい形にして民に出す。例えば警察署の所在所情報。APIをオープンにして、新しいサービスを作れないかという企画「Show Us A Better Way」。面白いサービスを思いついたら賞金2万ポンド。
●教育
-海外ではKindle DX @ Universityなど、教育機関でのIT化も行われている。教科書を電子化して使える。
-アメリカのSchool of the future。教科書の配布を止め、1人一台PCを与え、教科書は電子ブック、電子黒板、ロッカーの開閉もRFID化。
-日本の場合は7年くらい前に一時期学校のコンピューター化がはやったが、今は投資が止まってしまい、古いパソコンがあるのみ。ただし今年は補正予算でITの分野が組まれているため、それが外国のSchool of the futureのようなものに使われるかもしれない。
-イギリスでは初等教育でTwitterとブログの使い方を教えるべきという提言。(片や日本は携帯禁止。。。)
-Stanford on iTunes U
スタンフォード大学の教育コンテンツが無料でiTunesから入手できる。日本ではインターネット大学案に対して、文部科学省が保健室や体育館など物理的な施設がないと認められないという話もあった。
-livescribe(電子ペン)
ペンの中にカメラがあって、ペンをcradleにさすとパソコンにアップされ、メモの見せあいができる。
アメリカと比較して、EC分野でのネットネイティブ (NN)度はそこそこありそうだが、広告・メディアやヘルスケアの分野では大きく遅れている。
●ネットネイティブにするための発想
画一的 vs 個別化
一方向的 vs 双方向
提供者側の発想 vs 顧客中心
閉鎖的 vs オープン
日本は25歳以下の若者(デジタルネイティブ)の人口が少子化の影響で他国に比べ圧倒的に少ない。例えばインドは半分以上が25歳以下。ブラジルも若者が多い。
デンマークと日本の世代別の情報通信サービスの利用を比べると、高齢者まで全年代でまんべんなく利用しているのはデンマーク。日本は山型(10代と60代が低い)。
●Q&A
Qメディアリテラシーを学校で教えるには?
→リテラシーを教えることができる人材の育成。ドコモが携帯教室とかやってるけど。。。民間企業の人でもリタイアした人でもリタイアした人でもネット利用者で教育者を作るべき
QAudio book
→アメリカではオーディオブックがあるが、日本では文庫が素晴らしい。日本ではKindleのライバルは文庫かも。Kindleで売れたからといって紙の書籍が売れないわけではない(海外事例に基づき)。
Qヘルスケアのサービスが少ないのは法律以外での課題?
→Google healthには広告はなく、Healthボルトもビジネスモデルはない。日本でも同じ取組をしようとしている会社もある。うまく行かせるためには、データ入力などのユーザーの手間をどれだけ省けるかにあると思う。
Qヘルスケアの例で、なぜ厚生労働省はあのような対応をとったのだろうか?
→政策は色んな方面で考えなければいけなくて。飲み合わせで薬害が出るケースもある。厚生労働省が消極的な理由は薬害エイズ問題で、厚生労働省の行政官が裁かれるという悲劇があった。官の個人が罰せられるということは考えられないことだった。そのために、コンサバになってしまっている。
Q日本の誇れるサービスは?
→エンタープライズのサービスや携帯など。